KAWSとシンプソンズとサージェント・ペパーズ:ジャケットを巡って

アート

アートの世界においては、インスピレーションの源、オマージュ、そしてパクリの問題は永遠のテーマとも言えるでしょう。ビートルズの『サージェント・ペパーズ』、シンプソンズの『イエローアルバム』、そしてKAWSの『カウズアルバム』作品、これらはそれぞれ時代や文化を映し出しています。

ビートルズのアルバムは、音楽だけでなく、ジャケットデザインでも革命を起こしました。シンプソンズは、そのパロディ的な表現で、アートとエンターテイメントの融合を見せてくれます。そしてKAWS、彼の作品はアート界に新たな動きをもたらし、価値とは何か、オリジナリティとは何かを私たちに問いかけています。

それでは、音楽、アニメーション、そして現代アートが交差する魅力的な世界へ、一歩踏み入れてみましょう。

The Beatles – Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band

『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は、イギリスのロックバンド、ビートルズ8作目のオリジナル・アルバムで、1967年6月1日にリリースされました。このアルバムは、ビートルズがコンサート活動を終了した後に制作され、架空のバンドのショーというコンセプトで構成されています。ビートルズ中期の実験的なサウンドの集大成的なアルバムです。

『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のアルバムアートワークは、ビートルズの歴史の中でも最も象徴的で有名なものの一つです。このアルバムは、音楽のみならず、そのビジュアル面でも大きなインパクトを持っています。

アルバムのジャケットは、ポール・マッカートニーの着想から始まり、イギリスのポップ・アーティスト、ピーター・ブレイクと妻のジャン・ハワースによって最終的にデザインされています。彼らの斬新なアイデアとビジュアル表現が、アルバムに特別な魅力を加えています。

ジャケットにはビートルズのメンバーと共に、歴史的な著名人やキャラクター、オブジェクトが描かれています。これには物理学者:アインシュタイン、『不思議の国のアリス』の作者:ルイス・キャロルや、シンガーソングライター:ボブ・ディラン、ドイツの経済学者:カール・マルクス、アメリカの女優:マリリン・モンローなど、多岐に渡ります。

このアルバムアートワークは、ビジュアルアートと音楽が一体となった新しい表現の可能性を世に示しました。以降、多くのアーティストがアルバムアートワークにより創造的なアプローチをするきっかけとなりました。

ザ・ビートルズの『Sgt. Pepper’s』 アルバム・カヴァーに登場しているのは誰?
『Sgt.Pepper’sLonelyHeartsClubBand』のジャケットに掲載されている人物やものなどを全て紹介

The Simpsons – The Yellow Album

『イエロー・アルバム』のジャケット・アートワークは、ビートルズのアイコニックな『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のカバーアートを巧妙にパロディ化しています。このジャケットの右下部分には、シンプソンズの作者であるマット・グレイニング(Matt Groening)のサインが施されています。オリジナルのビートルズのアートワークに登場する人物やアイテムは、シンプソンズの愛されるキャラクターたちに巧みに置き換えられ、ポップカルチャーの二大巨頭が一枚のアートワークの中で融合しています。

『イエローアルバム』は、アメリカの人気アニメ『ザ・シンプソンズ』の2枚目のアルバムで、1990年のアルバム『ザ・シンプソンズ・シング・ザ・ブルース』の続編としてリリースされました。

The Simpsons Sing The Blues

曲は番組の挿入歌ではなく、完全なオリジナルソングです。

タイトルは、ビートルズの1968年のアルバム「The Beatles(通称:ホワイトアルバム)」をもじったもので、『ザ・シンプソンズ』のキャラクターの肌の色にちなんでいます。

Morrison in 2009

これを描いたのは、ビル・モリソン(Bill Morrison)というアメリカのアニメーターです。彼はディズニーのイラストレーターとして、シンデレラやバンビ、ピーターパン、リトルマーメイドなどのプロモーション・アートを制作していたこともあります。

Bill Morrison created artwork for the Little Mermaid VHS box. // Image courtesy of Bill Morrison
ホーミーが後ろ向いてるバージョン

KAWS(カウズ) – The KAWS Album

KAWS, The KAWS Album, 2005. Photo: Sotheby’s. Source: Artsy

2005年、NIGO(ニゴー)がKAWS(カウズ)に依頼して制作された「The KAWS Album」という作品は、先に紹介した「イエローアルバム」を基にしたアートワークです。シンプソンズのキャラクターたちの目が、KAWSの象徴的なX印に置き換えられているのが特徴です。

この作品のタイトル、「The KAWS Album」は先程の「The Yellow Album」をシンプルに変えたものと見られます。シンプソンズ(SIMPSONS)とKAWSを組み合わせ、「KIMPSONS」というユニークなフレーズも作品に刻まれています。

細部に目を向けると、KAWSが独自のタッチでアートワークに細かな変更を加えていることがわかります。これらのディテールが、彼の作品を一層魅力的にしています。

KAWSはアメリカの人気アーティストで、彼の特徴的な作品にはカラフルで幾何学的なデザインとXで交差した目のキャラクターがあります。ストリートアートとポップアートを融合させ、世界中で愛されています。

NIGOは日本のファッションデザイナーで、A Bathing Apeの創設者として知られています。現在はKENZOの、アーティスティック・ディレクターとしても活躍しています。

KAWSも、元々ディズニーでフリーランスのアニメーターとして短期間働いていたことがあり、『101匹わんちゃん』の制作にも携わっています。

この作品は、NIGOによって所有されていましたが、2019年4月1日に行われた、「サザビーズ香港」というオークションで競売にかけられました。予想価格の約15倍となる、1478万4505ドル(約16億4700万円)という価格で落札されました。これは現時点でKAWSの作品の中で最高落札額とされています。

KAWS本人によるオークション翌日のインスタグラムの投稿からは、喜びと興奮が伝わってきます。

「何とも奇妙な朝だ…
私の作品がこれほどの価格で売れるべきだと思っているか?-いいえ
今朝、いつも通りの時間にスタジオに到着したか?-はい
明日も同じことをするだろうか?-はい
良い一日を!」

What a strange morning…
Do I think my work should sell for this much?- No
Did I arrive at my studio this morning the same time I always do?- Yes
Will I do the same tomorrow?-Yes
Have a good day!

https://www.instagram.com/p/BvuMp8Ih2T4/

「ぼったくられた(”ripped off”)」

先程の『The Yellow Album』を描いたビル・モリソンは、これを受けて「ぼったくられた(”ripped off”)」と感じ、商業イラストのファインアートへの流用についての議論が再燃しました。

問題を複雑化しているのは、モリソンの『イエローアルバム』が、ビートルズの1967年の名作『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のアートワークにインスパイアされているということにあります。しかし、モリソン自身は、自らの作品を正統なパロディと位置づけています。

彼はCartoon Brewというアニメーションウェブメディアに、彼とKawsのアプローチの違いを以下のように語っています。

パロディとして成功するためには、大衆に出典を認識してもらう必要がある。私の『イエロー・アルバム』の場合、それは明快でした。ビートルズのアルバムジャケットはあまりにも象徴的なので、私のシンプソンズ版はすぐにパロディだと世間に認知された。また、私の絵は手描きで、オリジナルのビートルズのジャケットに触発されたものだが、それをトレースしたわけではないので、正真正銘のオリジナル作品となっている。

Kawsの絵は、ビートルズのオリジナル・アルバム・ジャケットのパロディだと誤解されているが、実際の出典である私の作品については言及されていない。Kawsの観客はシンプソンズのイエロー・アルバムを知らないことがほとんどだと思うし、もしそうなら彼の絵はパロディではないだろう。もちろん、Kawsが自分の読者を見誤り、私の作品が実際よりも有名だと思っている可能性もある。

ビル・モリソン

『The KAWS Album』がオークションで落札された際に、ニューヨーク・タイムズ紙を含む一部のメディアは、この絵がモリソンのデザインをトレースしたものであると気付けず、単純に『サージェント・ペパーズ』のジャケットとのみ比較されました。

さいごに

パクリとオマージュの問題は芸術には付きものです。今回の件に関して皆さんはどう思いますか?

アートの世界は、ビートルズ、シンプソンズ、KAWSといったアーティストが創り出した作品とともに、絶え間なく進化しています。それぞれの作品は、その時代と文化を反映し、互いに影響を与え合っているのです。

先日、2023年9月ユニクロとのコラボにて先行発売された、KAWSのアートブックにも収録されています。ユニクロではオンライン完売。Amazonでも予約開始されていたので以下にリンク貼っておきます。

参考サイト

The Yellow Album - Wikipedia
Bill Morrison (comics) - Wikipedia
KAWS Painting Sold for Record Breaking HK6m at Sotheby's NIGO Sale | Auctions News | THE VALUE | Art News
OnAprilFool'sday,Sotheby's NIGOLDENEYE®Vol.1 wasnojoke.ThehighlightofthenightbelongedtoKAWS' TheKAWSAlbum,aworkinspiredbyTheBeatles’ Sgt.Pepper'sLonelyHeartsClu...
A Tracing Of Bill Morrison's Artwork Sold For Million — He Received No Credit Or Compensation
BillMorrisonisthelatestcomicartistwhoseartworkmadesomeoneelserich.

コメント

タイトルとURLをコピーしました